機能の話ではなく、動機の話。 ここから先は、こうしたかった・こうしていきたい、を書いた。
同じ依頼が、担当者の理解や慣れによって、違う結果になってしまう。 その差を、個人の努力で埋めるのはもう限界だと思っている。
うまい人のやり方が道具の側に入っていれば、みんながそこから始められる。 やり方を覚えるのではなく、仕事に集中できる。
新人でも、異動してきたばかりでも、行けるところは同じ。 これが、MOVEでいちばん叶えたかったこと。
DXというと、たいてい外に委託する。要件を書いて、見積もりを取って、 何億という金額と、何年かの時間をかける。 それでも、現場の手に馴染むものが返ってくるとは限らない。 仕様を書いた人が、その仕事をしていないからだ。
MOVEは、そうやってできたものではない。 購買の中にいる、下っ端のバイヤーがつくっている。 開発チームも、専任の時間もない。あるのは、 その業務で毎日困っているという当事者性だけ。 苦しかったから、逃げ道として道具のほうを変えた。
だから直りが速い。朝に言われたことが、その日に直る。 意見は画面の中の意見箱(BEEF)で集めて、そのまま次の形にする。 完成品を納めて終わり、ではない。使いながら、毎日かたちが変わっていく。
このシステムでいちばん見てほしいのは、たぶん機能ではない。 購買の人間が、自分で自分の仕事の型をつくったという、そこだと思っている。
目指しているのは、必要なときに開くシステムではない。 デスクトップに、ずっと開かれているもの。 購買の仕事がそこから始まって、そこで終わる業務ポータル。
一日じゅう目の前にあるなら、見た目は妥協できない。 だからUIには徹底的にこだわった。 ちらっと見えた誰かのモニターが、かっこよく見えるくらいには。
探しにいかない。自分の持ち物と、止まっているものが、最初の画面にある。
社内から来た調査依頼を、担当がそのままサプライヤーへ回せる。誰が担当でも、同じところまで行ける。
転記しない。回答がそのまま案件の中身になり、交渉のはじまりになる。
付箋やノートに書いていたことを、案件の横に書く。次に開いた人が読める場所に残る。
決裁を一括で。報告資料は、これまで書いてきた内容から組み上がっている。
新しいシステムというだけで、人は身構える。 覚え直しが要る、前より遅くなる、どうせ使いにくい—— その予感を持たれた時点で、どんなにいい道具でも使われない。
だからMOVEは、いま使っている管理表と報告資料の見た目を、そのまま再現した。 列の並びも、罫線の引き方も、数字の置き場所も、見慣れたかたちのまま。 開いた瞬間に「知っている画面だ」と分かれば、説明はほとんど要らない。
変えたのは、裏で線がつながっていること。 見た目を変えないことが、いちばん強い導入の仕掛けだと思っている。
値上げ対応のためにつくった。けれど購買の仕事は、どれも同じ骨をしている。 依頼が来て、調べて、決めて、通して、残す。
道具ではなく手順の型をつくったので、隣の課にも、別の業務にも移せる。 製造の方式が工場から工場へ渡っていったのと、同じやり方で広がる。
いずれ、購買業務のすべてがここから始まる。 そこまで持っていくつもりでつくっている。
ひとつの言葉に、四つ掛けてある。
どれか一つを選ばなくていいのが、この名前のいいところ。